「女王国の城 上・下」有栖川有栖

江神二郎シリーズ最新作。
なんと前作「双頭の悪魔」から15年余の歳月を経て出た
新作だとか!
しかし、私は第一作「月光ゲーム」から、立て続けに4作品、
通して読むことができた。江神さんに出会うのが遅かったせいで、
待つことなく一気に読むことができた。

けどまぁ、作者があとがきで言うとおり、上巻の流れが
いささか・・・川の流れにたとえるならば、下流から上流へ
流れが逆に進むようなもので、平地に降りた幅の広い川が、
のたり、のたりと澱んでいるようなヾ(;´▽`A``
何度、眠気に襲われたことか。
こんなはずはない、有栖川なのだから・・・と、
なおも読み進むと、下巻に入って突然、流れが急になる。
ここまでくれば、急な流れに身を任せ・・・です。

「双頭の悪魔」から、気になっていた。
マリアの一人称語りが、アリスのそれに比べて、
少しぎこちない、ような。
「双頭の悪魔」では、読み進むうちに安心したのだが、
「女王国の城」では、上巻ではほとんど
いらないんじゃないか と思えたし、下巻に入っても・・
20歳になろうという大人の女性の
一人語りとはとても思えず、まるで小学生の女の子のよう、
と言っては大作家に失礼だとは思うけれど、いまどき、
小学生の女の子でも、もっと大人びた思考をしていると
思うんですけどもね・・・
それと、マリア視点で書いているにもかかわらず、
サークルの先輩のことを望月、織田、と呼び捨てで書いているのも、
最後まで、違和感が残ってしまった。アリスが言うなら、するっと
飲み込めるのだが。

アリスとマリアの間柄は、「孤島パズル」あたりのが、
一番好きだったな。ああいう、友達以上、恋人未満の微妙な関係、
本人たちは、まだまったく気付いてなくて、人から言われれば、
とんでもない! とムキになって否定しそうな、
・・・それこそが、青春だなぁ! と思う。

青春、っていえば、「月光ゲーム」は、ほんと、青春だ。
作者も若いころ、夢中になって書いた作品らしくて、
まさに、若さがあって初めて書ける作品のように思う。
自分にはなかった体験だけど、新しくあとから書き込んだ、
青春の1ページ、みたいな感じかな。
「青春」「青春」と、青春真っ最中の人は決して言わない、
それをいうのは、それが自分にとって遠い過去になってから、
とか、そうなのね。そうです。(゚∇゚ ;)

「女王国の城」に戻るけれども・・・

登場人物の把握が、4作品の中で、一番、しにくかった。
過去の話まで含めて、殺された人が、どういう人だったのか、
死んでしまったことに、何の感慨も沸かなくて。
それは、メンバーにとっても、同じだったんじゃないかと思う。
死者との関わりがあまりに薄く、哀悼の気持ちも、ほとんど
語られなかったんじゃないか。謎を解くにしても、その
必然性が感じられなくて、心理的に盛り上がらなかった。

なんてね、文句ばかり(^^;
しかし、今度は短編集が出るらしいですね。
それに、いつになるか分からないけれど、あともう1作。
江神さんシリーズ、楽しみにしてます。

「メルサスの少年 螺旋の街の物語」菅浩江


絵を読む物語だと。
読んだ世界が絵になって、あとに残るから。
拙い自分流のデッサン、
夢で見た光景のように、細部を思い出そうとすると
かえってぼやけていくような、はかないものだけれど。

タイトルや表紙絵からは、少年少女向けの話かと
思いますが、対象年齢はもうちょっと上かな。
少年の成長の物語ではありますが、
けっこうダークなモチーフも多いです。

変態。
蝶が幼虫から成虫になる、あれって
本当に不思議だ。かわりゆく途中はどうなって
いるんだろう、あのサナギの中は、って、
思ったこと、無いですか。
変態に失敗したサナギを、見た事があります。
あろうことか、糸を引きながら、
白いウジ虫が出てきた。
よく太ったウジ虫が、もにょもにょ・・・
幼虫のうちに何か天敵にやられ、
身をよじって苦しんだ挙句死んでしまった
幼虫もいました。
自分が吐いた体液にまみれながら、
本当に苦しそうだった。

人が、もし、変態を行うとしたら。
メルサスの町の女たちのように、
半身半獣に生まれ変わるために。
考えたこともなかったですが、
なかなか、読後に強い印象が残りました。

「アイ・アム I AM.」菅浩江


このごろ菅浩江さんにはまっている。
この人が描くロボットの哀しみは、
どうしてこんなにピュアなんだろう。
介護ロボットの眼に映るホスピス病棟の
情景が、つい先日見学したばかりの
介護型老人施設の情景に重なる。
人生の終末期って哀しいな。
考えないようにしているけれど、
眠りの中の夢は正直で、時々、
具体的な場面も持たない悲しいという
感情だけの夢を見る。
それでも、いま、できることを。
いま目の前にある時間を大切にして、
よりよい時間を積み重ねて。
生きてきてよかったと、少しでも。
主人公と一緒に、そう思った。
.

「南極料理人」


ほのぼの系のBGMが、まだ耳に残ってる。
食べ物の映像が、とにかく美味しそう。
オジサンたちと、一部お兄さんの話。

宇梶さんがそのまま南極に行っていたら、
精神的苦労はもっとヒドかったかも?
理想も夢も抱かなかった西村さん(堺雅人さん)だからこそ、
淡々とこなしていけたかも。
8人のメンバーのうち、3人が最後まで把握できなくて、
誰が誰だか・・ に、なってしまった。
西村さんは、お母さんみたいで。
そういう視点で、共感できたというか、同感したというか、
そういう思いで、最後まで見られた。
いつも一番最初に起きて、朝ご飯の支度。
音楽かけてみんなを起こして、厨房と食堂を行ったり、
来たり、次々にお皿を並べていく。
食べ物になんか興味はなさそうな男たちが
ザツに料理を平らげていくのを、黙ってじっと見守る
西村さん。
「7時に起こして、って言ったのに!」なんて
青年に文句を言われたり。
ちょっとしたトラブルがあって、西村さんが料理できなかったときの、
みんなの様子が可笑しかった。
できあがった油ぎった下手な唐揚げ。
それはたぶん奥さんの手料理とも重なったんだろうナ。
泣きながら食べる西村さんに、なんか、ものすごく共感した。

でも、水が大切な基地なのに、あんなに小皿たくさん
使って、片づけは大丈夫なんだろうか。
水では洗わないのかな?
片づけまで毎回西村さんがひとりでやっているとは
思えなくて(負担多すぎる・・・)きっと手伝いが
当番制なんじゃないかと思ったんだけど、
片づけのシーンはなくて残念。
西村さんが、麺打ちの前に生地を包んであったシートを
軽くたたんで後ろに片づけたりとか、
そういうシーンが妙に、好きだった。


「永遠の森 博物館惑星」菅浩江


9つの短編を連ねて全体でひとつの物語を成す。
SFとしての舞台に慣れれば、だんだん読みやすくなっていく。
主人公の孝弘も、派手さはないが好人物。
7つめの話「嘘つきな人魚」あたりから、場面がかなり
鮮明に描けるようになっていった気がする。
次の「きらきら星」も、ティースプーン型の紫色に輝く物体を、
いつかどこかで見たかのような錯覚に。

ところで、この作品、ラジオドラマになってました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7809376
ここで聞けます。

ネネが!
ネネが、ふじこちゃん。ルパン3世の。
そう来たか。
いっぺんに印象が変わる。(゚∇゚ ;)

原作にはない孝弘の妻ミワコの愚痴が、それは
いらないかなぁ、って気がした。
ミワコは原作にはほとんど出て来ない。
孝弘の意識の中にミワコが具体的なデータとして
浮かぶことが少ないからなんだけど、
それはそれでいいのにな。
「邪魔にならない妻」と孝弘が考える、
考えてから、自分ではっ! とするんだけど、
それまで、ミワコは、漠然とした影のような存在で
いいのになぁ。
そこに、すごくロマンがあったのになぁ。

なんにしても、ネネの声がふじこちゃんじゃぁ、
ミワコも、ムネーモシュネーよりネネ・サンダースのほうに
嫉妬しちゃうんじゃないかなぁ、なんて思った。ヽ( ´ー`)ノ


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